【博士進学の困りごと#2】卒業できるのか…?

「研究は上手くいくのか?」、「無事に卒業できるのか?」
博士後期課程進学を考えている人や在学中の人の多くが直面する、この不安。
この記事では公的な情報についてまとめるとともに、在学中あるいは博士号を取得した実体験からいくつかのポイントを紹介します。
大学院修了について
※詳細はご自身の大学院の修了要件を確認ください。
大学院で取得できる学位には一般に「修士号」と「博士号」があります。
- 修士号:大学院修士課程(博士前期課程2年間)の修了により学位が取得できます。
修了要件としては一般に、講義などでの単位習得と修士論文の提出・プレゼンが必要になります。 - 博士号:大学院博士課程(博士前期課程2年間+博士後期課程3年間)の修了により学位が取得できます。※優れた研究業績をあげた場合には、これよりも短い修了期間となる場合があります。
修了要件としては一般に、講義などでの単位習得と学術雑誌への論文投稿、投稿論文を基にした博士論文の提出・プレゼンが必要になります。
博士後期課程の平均修了年数
博士後期課程の大変さが表れているデータとして、分野別の修了年数を以下に示します。博士後期課程の最低修了年数(3年)以上在籍する場合が多いです。
(引用:学校基本調査 令和6年度 高等教育機関 卒業後の状況調査 卒業後の状況調査票(大学院))

※ここでは、平均超過年数の算出時に「4年以上」は4年として計算しています。
理学、工学、農学の場合は40~50%が最低修了年数で修了していますが、人文科学、社会科学の場合は20%でした。また、平均超過年数も同様に人文科学、社会科学で多くなる傾向がみられました。
令和6年度の調査では、最短修了年数を超過する方が過半数となりました。一方で、博士後期課程の学生に対する経済支援制度(詳しくはこちら)のほとんどは最短修了年数内での支給となっており、できるだけ最短修了年数で修了したいものです。
博士号取得までのポイント
- 博士課程では何が求められますか?
博士課程の本質は「自己管理ができる研究者になること」です。
講義や与えられた課題をこなすのではなく、何を学び、どのように研究を進めるかは全て自分の責任にゆだねられています。
修了後に独立した研究者として活躍できるよう、自主的に学ぶ姿勢が求められます。 - 博士課程を卒業するためのスケジュール管理のコツは?
計画的に取り組むことが重要です。
研究の進捗を見直しながら、論文執筆や学会発表の予定を立てましょう。
最低でも月に一度は指導教員と相談し、方向性を確認することを推奨します。 - 研究活動を順調に進めるには?
オリジナルな研究をすることから、個人的な作業になり、孤独感が生じることも多いですが、先輩や同期と情報交換することで新たな視点が得られることもあります。
学会や研究会への参加、留学や研究インターンシップなど、外部との交流も視野に入れましょう。 - 研究や生活で困ったときは誰に相談すればいいですか?
・研究で困ったとき : 指導教員、他の先生、先輩・同期
・生活(経済支援など)で困ったとき : 指導教員、事務、先輩・同期
・進路で困ったとき : 指導教員、他の先生、先輩・同期、外部の人 - 研究が行き詰まったり、モチベーションが下がったときの対処法は?
・「なぜこの研究を始めたのか」を振り返る。
・小さな目標を設定し、達成を積み重ねる。
・活躍している研究者の話を聞いたり、一緒に活動できる機会を探す。
・新たな視点を得るために、学会や研究会、留学や研究インターンシップに参加する。 - 博士課程における指導教員との関係で注意すべきことは?
指導教員のスタイルは分野や個人によって異なります。
自然科学系では研究室によっては共同研究が中心となり、指導教員の研究方針に沿うことが求められるため、自分の研究のオリジナリティをどのように確保するかを考える必要があります。
一方で、人文・社会科学系では自主性が重視され、積極的に相談しないと孤立する可能性があります。自分の期待する指導と整合性があるか確認しましょう。 - 博士号を取得するために最も重要なことは?
博士課程は精神的に大きな浮き沈みがあります。
最初は期待と興奮に満ちていますが、先輩研究者の大きい背中や洗練された出版物に触れることで、次第に自信を失ったり、研究の進捗に焦ることもあります。
それでも積極的に学び続けることで研究の魅力を再発見し、自立した研究者に成長できます。
最終的に重要なことは「終わらせなければならない」という強い決意です。 - マイノリティの立場で博士課程を卒業する際の注意点は?
博士課程に進学する学生は、一般的な見地からは未だ少なく、そのため留学生、LGBTQ+、社会人学生、障害者などのマイノリティと同様に学術面だけでなく生活面でも苦労を伴う場合があります。
相互扶助のグループに参加したり、ハラスメントを受けた場合は記録をとり相談するなど、支援を求めることが大切です。
まとめ

この記事では博士号取得についてまとめました。
博士号の取得は容易ではないですが、取得することで独立した研究者としてのスタートラインに立つことができます。
この記事を読んでくれた皆さんが、自身の動機や周囲・社会・将来を意識しながら、強い決意をもって博士後期課程での研究に取り組むことができるよう応援しています!