これまで実際に中長期研究インターンシップを実施した学生さんの声をあつめました。

企業が博士学生に求めるものはなにか

東京工業大学 物質理工学院 応用化学科 博士課程1年
※2018年度に大日本印刷株式会社にて研究インターンシップを経験

私は大日本印刷株式会社にて2ヶ月間,インターンシップに参加した。“企業が博士学生に求めるもの”を見つけることを目的にインターンシップに臨んだ。

インターンシップでの研究テーマは,普段の研究と大きく異なるため,新しく勉強することばかりで苦労したが,新鮮でワクワクした。先輩方の支援のおかげで,1ヶ月も経つと研究テーマへの理解も深まり自身で試行錯誤しながら研究を進めていくようになった。実験計画を立て,実験し,得られた結果を考察して,計画を立て直す,気づくと一連のプロセスを繰り返していた。研究の進め方については,大学研究となにひとつ変わらなかった。大学研究と企業研究の間に共通点を見つけた。考えてみれば当たり前かもしれない。大学研究を離れ,企業研究に携わることで一連のプロセスの重要性を感じた。

企業が博士に求めるものはなにか。インターンシップが終わり,この2ヶ月を振り返った。インターンシップ中,しばしば私は自身の専門知識をもとに研究を進めた。先輩方にとっては専門外,これまでにない研究方策であったため驚かれたが,幸運にも良い研究成果が得られた。研究を進める上で,得られた結果を考察し再計画する,そしてどれだけ革新的なアイデアを打ち出せるか,博士に求められている能力はココにあるのではないか。そのような研究者に成長するためには,専門性を高めるだけでなく,幅広い専門外の知識を身につける必要があると実感した。

インターンシップを経験し,自身の目指す研究者像を改めて考え直した。同時に,どのような能力を磨き,身につけていくべきか,学ぶことができた。自身のステップアップに繋がる貴重な経験だと確信している。最後に,大変貴重な機会をご提供して頂いた大日本印刷株式会社の方々,指導教員,インターンシップ関係者の方々に感謝したい。

数学が現実社会の業務と繋がるきっかけ

奈良女子大学 人間文化研究科 数学専攻 修士課程2年
※2018年度に住友電気工業株式会社にて研究インターンシップを経験

「数学」というと多くの方が思い浮かべるのが計算をする、問題を解くということを考えるであろう。他の分野においても様々な研究テーマがあるように数学においても多くの分野がある。その中でも私は確率論を専攻しており、自身が将来どういった仕事に就きたいかを考えたときに「データ分析」に出会った。しかし、理論である数学は数式の変形や物事を論理的に考えることが主な研究となっている。そのため実務経験が工学分野の方々に比べて格段に少ない。またデータ分析を実際に行いたいと思ってもプログラミング経験が少なく、実践でやっていける自信もなかった。実際にデータ分析をやってみたいという気持ちはあるがそれが一体どういったものかは詳しくは分かっていなかった。しかし今回のインターンシップで受け入れてくださった住友電気工業株式会社様で約1ヶ月間、実際の業務に携わらせていただいたことで数学が現実社会の業務と深く関わりを持ち、役に立っていることを自身の目で見て、そして経験することができた。

数学は幅広い分野で活用されているとよく耳にするがどんな場面でどういった場所で活用されているかは実際に自身が経験をしないと分からないものである。今回のインターンシップを通してデータ分析についての理解が深まり、また数学の重要性を痛感することができた。そして自身の理論への理解をより一層深めていかなければいけないとも感じた。

インターンシップは自分たちが将来就きたいと考える仕事が本当に自分自身に合っているか確かめるきっかけ、企業で働くということ、その会社について知るとてもよい機会である。プログラミングに大きな苦手意識を持っていたが今回のインターンシップを通してより身近なものへと変化した。やりたいという気持ちがあればダメもとであっても挑戦する価値は十分にある。

研究者として大きく成長できる絶好の機会

京都大学 薬学研究科 薬科学専攻 博士後期課程2年
※2017年度にシスメックス株式会社にて研究インターンシップを経験

約2カ月間、シスメックス株式会社でのインターンシップに参加しました。将来、私は企業の研究職として活躍することを目指しており、学生時代に自身の研究内容を深めるだけでなく、商品開発につながるような応用研究も理解することが重要だと考え、参加を決意しました。
インターンシップには「普段大学で磨いている、研究を進める力を新しい研究環境で試し、研究者として成長すること」と「企業での研究を学ぶこと」の2つの目標を立て、臨みました。実際にインターンシップを終え、上記目標はどちらも達成できたと思います。論文情報をヒントに論理的に考えながら研究を進め、ディスカッションを繰り返し、2カ月間という短い期間の中でまとまったデータを出すことができました。さらに「精度の高い診断を実現する」製品の開発を見据えた研究での大切な考え方も学ぶことができました。
今回のようなインターンシップは、研究者として腕を磨き、視野を広げる絶好の機会であると感じました。気概を持って取り組むことで、将来目指す研究者像に近づける、貴重な経験ができると思います。
最後に、受け入れていただいたシスメックス株式会社の方々、インターンシップへの参加を快諾いただいた指導教員ならびに事務局の方々に感謝いたします。

進路を考えるきっかけと気づきを与えてくれた良い機会

筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士後期課程3年
※2016年度(博士後期課程2年時)に日本ゼオン株式会社にて研究インターンシップを経験

私は、約3ヶ月の間、日本ゼオン株式会社の研究所でインターンシップに参加しました。その理由は、博士後期課程卒業後に、企業の研究者として働くか、アカデミックの道に進むかという進路を考えるに際し、実際に企業の研究所を見ておきたかったためです。実際にインターンシップに参加して、製品化して世に送り出す応用研究の中にも学術的な研究の考え方や大学で勉強したことが大いに役に立つとわかり、企業の研究の方が面白そう、自分にあってそうと感じ、企業への道を選択しました。また、インターンシップの際、スケジュール管理されなかったため、自分から考えて行動することが必要であり、特に博士後期課程の人は、積極的に動くことが求められると感じました。また、専門外のことで新たに勉強することも多く、もっと勉強しておけば、より有意義なインターンになっていたとも感じました。なので、これからインターンする人は後悔のないよう、積極的にチャンスを掴みに行くといいと思います。最後に、日本ゼオン株式会社の関係者の方々、このインターンッシッププログラムを補助してくださった方々に感謝致します。

自分の『可能性』と『課題』に気づけたインターンシップ

九州大学 総合理工学府 量子プロセス理工学専攻 博士後期課程2年
※2016年度にパナソニック株式会社にて研究インターンシップを経験

ンターンシップを通して、未知の領域に積極的に挑戦する姿勢、綿密な研究計画と基礎理論への理解の重要性を学びました。1〜2ヶ月間のインターンシップでは、自分から研究アプローチを提案することができ、研究能力を自己評価できます。自分の知らない世界の経験、自分の適性の発見や、自分の研究能力を試したいという博士課程学生には中長期研究型インターンシップを活用してもらいたいと思います。また、社員の方々に、我々の研究室に興味を持っていただけたので、このインターンシップを機に、産学連携を強めていきたいと思います。

新しい環境、新しい気づき、新しい交流

東京工業大学 情報理工学研究科 情報環境学専攻 博士後期課程3年
※2016年度にシスメックス株式会社にて研究インターンシップを経験

私は、東京工業大学の博士後期課程において、人の体内の化学的な仕組みを数学を用いて解明する研究を行っておりました。この研究を実際に利用するには、血液などの体内の状態を測定することが不可欠でした。しかしながら、私は体内の状態を測定する機器の現状とその問題点にあまり詳しくありませんでした。そこで、血液などの計測・分析を行う機器や試薬の研究開発を行っているシスメックス株式会社の中央研究所にて、3ヶ月間のインターンシッププログラムに参加しました。

このプログラムでは、私自身の研究内容とは直接関係ない課題を企業という異なった環境で取り組みました。プログラムを通して、計測機器の現状のみならず、企業内のプロジェクトの進め方や企業での課題設定の方法を学ぶことができました。特に、企業内での様々な研究者と親交を深めることができた点が、かけがえのない私の成果と考えています。今後も、インターンシップに携わった方々との交流をすることにより、様々な視点から物事を考えられる研究者になりたいと思っております。

最後に、シスメックス株式会社の関係者の方々、このインターンッシッププログラムを補助してくださった方々に感謝致します。

インターンシップを経験することで、自分の目指す人物像が明確に

奈良女子大学 人間文化研究科 物理科学専攻 博士前期課程1年
※2016年度に株式会社巴川製紙所にて研究インターンシップを経験

インターンシップへの参加を希望したのは、企業での研究開発はどこをどう意識してなされているのか、現場に飛び込むことにより理解したかったということと、専門が理論物理であるため、実際に物質にふれ、視野を広げることで自己の研究の方針や将来性について深く考えたかったためです。

約2ヶ月間、株式会社巴川製紙所 事業開発本部 技術研究所でインターンシップに参加し、目標以上の成果が得られたと思います。「ニーズをつかみ、いい製品を作っていくためには、いろいろな情報を取り入れアンテナを広げておくこと」が大切だということを学びました。また、開発を通して物性を考えることの面白さを再確認し、普段の研究に対するモチベーションが上がったことや、実験結果の報告をしていく中で、物理学のさらなる理解とそれを分かりやすく説明する力が必要だということにも気づくことができました。

これらの気づきと、沢山の尊敬すべき方々との出会いにより、自分が目指す人物像が掴めてきました。理想像を認識し、目指すことにより、普段の大学での生活でもおのずと、これらのことを意識して行動することが多くなり、以前よりも人として成長できたように感じています。

インターンシップを通して得られた「気づき」

九州大学大学院 総合理工学府 量子プロセス理工学専攻 博士後期課程1年
※2016年度に東レ株式会社にて研究インターンシップを経験

約2ヶ月間、東レ株式会社の先端材料研究所でインターンシップに参加しました。この実習では、大学で行っている研究分野とは異なる分野のテーマを経験しました。その中で、企業と大学の研究スタイルの違いを感じることができました。企業の研究グループは顧客密着で、常に変わるスペックに対してのアンテナが鋭いと感じました。特に、こういった情報を研究者自身が直接取り入れる活動をしており、このような環境での研究活動を通して、こちらに示す二つのことが重要だと感じました。

一つ目は、コミュニケーションです。グループで一つの研究テーマを持つため、研究能力以外にコミュニケーションが非常に大切だと感じました。もう一つは、自身の柔軟性です。当たり前かもしれませんが、自身の専門分野だけでなく、他分野へ応用する力が求められると感じました。研究インターンシップを通して得られたこれらの「気づき」を今後の研究活動に活かし、課題に対して様々なアプローチができる研究者を目指していきたいです。

最後に、受け入れてくださりました東レ株式会社の関係者の方々、長期のインターンシップを快諾していただいた指導教員ならびに事務局の方々に感謝いたします。

受入先から頂いた、博論研究に対する配慮に支えられ

東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻 博士後期課程1年
※2015年度に日本ゼオン株式会社にて研究インターンシップを経験

日本ゼオン株式会社において、13週間にわたるインターンシップに参加しました。

私の博士論文研究は「農工横断的解析に基づいた植物資源の利活用による食料・化成品・燃料生産システムの強化」であり、今回のインターンシップではこれに沿ったテーマを選定頂いたため、実社会の応用に関して知見が得られるものと期待しました。

テーマは事業化検討で、ケミカルツリーの探索を文献調査、プロセス概念設計、シミュレーションによるコスト優位比較と一連の検討を通して、企業での事業化検討のやり方をよく理解できました。同時に、最先端の分野のみならず、既往の化学工学の知識も工業化と云う観点からは重要だと再認識しました。

今回のインターンシップでは、週4日は企業で課題解決に取り組み、週1日は大学で講座内での情報交換、指導教員との討議、インターンシップ進捗報告を行わせて頂きました。このように、期間中の疎外感が生じないような配慮をして頂いたことが大変ありがたく、今後長期のインターンシップではこういう配慮をすることも有効な方法ではないかと感じました。

最後に今回このような機会をアレンジ頂いた日本ゼオン株式会社の関係者の方々、長期のインターンシップを快諾頂いた指導教員ならびに事務局の方々に感謝いたします。

インターンシップで実感した「二つの変化」

京都大学大学院 工学研究科 合成・生物化学専攻 博士後期課程2年
※2015年度に東レ株式会社にて研究インターンシップを経験

2015年夏、私は東レ株式会社の電子情報材料研究所でインターンシップに参加しました。ふだんとはまったく異なる研究テーマに取り組むことができ、大きな刺激となりました。この経験をとおして自分に大きな二つの変化が起こったと思います。

一つは、異分野の専門知識を重視するようになったことです。東レにおける研究テーマの発足経緯をいくつかお話しいただき、ある技術が当初は予想もしていなかった分野に応用された例を知ることができました。これにより、大学に戻ってからも、自分のテーマがどのような異分野に応用できるかをつねに考える習慣がつきました。

もう一つは、世の中のあらゆる研究は学術的価値の高い基礎研究と世の中に役立つ技術開発という二面性をもつと考えるようになったことです。これら二つの面のどちらかに偏りすぎることなく、そのバランス感覚に優れた研究者をめざしたいと考えるようになりました。

めざすべき理想像を視野に、大学での行動に変化が

大阪大学大学院 工学研究科 地球総合工学専攻 博士前期課程1年
※2015年度に三菱重工業株式会社にて研究インターンシップを経験

中長期研究インターンシップに参加して、さまざまな点において得るものがあり、成長できたと感じています。なかでも研究に対する接し方が変化したことがもっとも大きいのではないでしょうか。長期間にわたり企業で研修をさせていただくことで、大学にいるだけでは発見することのできなかった、企業が求めている人材や自分の能力、私たちが担っている将来への責任などを感じることができました。すると、大学での生活でもおのずと、これらのことを意識して行動することが多くなりました。ぼんやりとではありますが、自分自身がめざすべき人材の理想像を認識できたことで、研究や課外活動への意欲が高まるなどのベクトルにつながりました。

貴重な大学生活をどのようにすごすかは個人の自由であると考えています。しかし、考え方によっては社会に出るための土台を固める場とも捉えることができます。そう考えたとき、中長期研究インターンシップは、私たち学生が大きく飛躍する機会となる、とても有用性に富んだ体験であることに気づくことでしょう。

与えられた課題の奥深さ、親身な支援に支えられ、産業界で活躍する自分を思い描く

九州大学大学院 数理学府 博士後期課程2年
※2015年度にローランド株式会社にて研究インターンシップを経験

ローランド株式会社にて3か月のインターンシップを体験しました。数学、とりわけ自身の専攻を実社会で活かす可能性について懐疑的であった私は、インターンシップ先を決めるにあたり、どのテーマなら「数学を活かしたい」と考えられるかという点を重視しました。

ローランドの方から、数学で解決が見込め、なおかつ、私にとっても興味深い課題をご提示いただけたことにたいへん感謝しています。Rや統計、信号処理など、ふだんは扱わない知識を用いて、ある一定期間内で課題の解決を試みることは予想以上に負担が大きいものでしたが、課題のもつ奥深さに対して日々感動しつつ、同社の方がたからの親身なご支援、ご指導を支えに課題に向き合うことで、最終的には一つの成果を生みだすに至りました。

数学を産業に応用する可能性にふれた今回の経験は、純粋数学の知見と経験のみに基づいていた私の視野を大きく拡げてくれました。さらに、産業界での将来的な活躍、とくに今回の奥深い課題の発展、今後の取り組みへの希望につながりました。

「企業に開かれた研究」の遂行に欠かせない能力

東北大学大学院 工学研究科 応用物理学専攻 博士後期課程2年
※2014年度に三菱電機株式会社にて研究インターンシップを経験

私は三菱電機株式会社の先端技術総合研究所において、約2ヶ月間のインターンシップに参加しました。普段とは異なる環境での研究生活を通して、自己の成長につながる発見を得ることを目標に挑み、次のような「気づき」を得ました。

まずは、研究成果がもたらす価値と社会とのつながりです。たとえ個人でおこなう研究であっても、その成果が影響を与える範囲は個人に止まらず、企業でいえばグループから部署、事業所、会社全体、さらには社会へと拡がっていることを再認識しました。こうした「社会に開かれた研究」に取り組むには、研究遂行能力だけではなく、情報を伝えるコミュニケーション能力も極めて重要だと実感しました。

研修中に装置のトラブルで仕事が止まってしまう事態がありましたが、社員の皆さんはメンテナンスの手配や作業計画の立て直し、仕事の発注者への事情説明などを迅速に処理されていました。問題解決能力や計画力、トラブルへの対応力の重要性も痛感した出来事でした。

インターンシップ修了後は、これらの「気づき」を自己の成長のための指針として生かしながら、大学での研究生活に取り組んでいます。

これまでの事例集が下記よりダウンロードできます!